平成十六年の春には、皆様の強い御要望にお応えして、戦災で焼失した「不動明王」が見事に復刻されて、新たに守護佛として本堂に安置されました。不動明王は衆生を守護するためにこの世に出現されました。不動明王の加護と慈悲により、皆様が永久に護られることをお祈りいたします。
不動明王は大日如来が衆生を教化するために忿怒身に化身した姿であり、数ある明王の中の最高位であると同時に、その名のとおり「動かない守護者」を意味しております。瑞応寺の「不動明王坐像」は聖観音菩薩立像と同じく、両腕を除いた頭体幹主要部を一材から彫成する「一木造り」を基本としていますが、聖観音菩薩像が立像であるのに対して本像は坐像であるため、古くから坐像に用いられる基本的な構造として、膝前部材には横方向に材を配置する木寄せを施しています。本像の素材には、瑞応寺境内に育った欅(けやき)が使用されていますが、これは当寺所縁の欅が佛師の手により佛像に姿を変え、再び衆生救済のために当寺に戻ってきたことを意味しています。表面の仕上げには歳月の積み重ねを表す古色(こしょく)彩色を用いて、さらに台座と光背には古色彩色の上に柿渋を塗り重ね、深みと味わいを表現しました。頭部と体幹部には像内を空洞にするための背刳り(せぐり)を行い、干割れを最小限に留めると共に、像の重量を軽減する工夫が施されております。さらに胎内には不動明王を表す梵字「カーン」を記し、発願の由緒と謹刻年、および作者名を併せて明記しました。
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